テリベア国の国王には、しるしがありました。それはほくろです。
国王の右の肩にはひし形のほくろがあるのです。
このひし形のほくろは、最初、しずくの形をしていました。
肛門には、六つのほくろがあり、線を結ぶと、まるで南十字星のようです。
このほくろの他にも、国王の母親が、息子に、国王のこころをみていたことは、いつもありましたが、この国王のしるしに何より思うことは、地球という星にいた頃をみた、息子の、動物のいのちに対しての、まなざしでした。
地球という星で、雄ぐまの子殺しを知ったとき、母は泣いて、生まれてはじめて神さまがこわいと思いました。
それと同じほど、息子が心配でした。
母親と息子は、仔ぐまとお母さんぐまがいつもいっしょなのを、自分たちによく似ていて、とってもかわいいと思っていました。
息子に、こんなことを知られてしまった、と母親は失望しました。
このとき、息子は、まだ10歳になったばかりでした。
ところが息子は、母親が息子を心配するのとおなじくらい、親を心配していました。
こころのやさしい母親が、傷つきすぎてしまったと思い、たからもののくまのお人形も、こわがるようになってしまうのではないかと心配しました。
いつも、くまがかわいいと言っている母親です。
息子のこともくまちゃんにそっくりといつも言っていました。
よく、ママの一番おおきなテディベア、と息子に言っていたのです。
自分の母親に、たえられないことだと思いました。
息子は、雄の子殺しが、自分の仔を宿すためのものだとわかっていても、泣いたりすることはありませんでした。
野生、というのだと、自然にわかっていました。
動物の本能に、自分の感情を、生まれつきはさまなかったのです。
その後、母親はたしょうむりをして、野生のくまをかわいいと思おうとしましたが、一度つよく持ったおそれを失くすことはなく、やっぱりぬいぐるみのくまちゃんがいい、と息子のくまちゃんにずっとくっついているのでした。
ちいさな頃から、ママのテディベア、と母親にたいへん可愛いがられていたので、息子は、ほんとうに、じぶんをほんもののテディベアだと思うところがありました。
そのかわいいくまのお人形の名前は、息子の耳のは、テリベア、と聞こえていました。
ママのいちばんおおきなテリベア、抱っこして眠ろう! と、母親は息子を抱いて眠るのでした。
ほんとうに、じぶんをほんもののテディベアだと思うところのある息子のしんけいは、ちがった発達をしました。
息子は、テディベアにような肩で動くのでした。
それは、テディベアのように動いているのとはちがいました。
髪の毛の流れが、まるでほんもののテディベアと同じに流れます。
息子は、何にも気づかず、おどけた丸い目をしてみせます。
母親の目には、ほんとうにほんもののテディベアみたいに映るのでした。
このとき、息子のからだに起こったことをみてみましょう。
息子のしんけいの、つたえる、というはたらきが、テディベアをつたえ合っていました。
それが反応を起こし、あらわれていきます。
そのことを、テリベア国では、テディベアのしんけいを持っている、といいます。
国王は、テディベアのしんけいを持っているのでした。